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社会と土木の
100年ビジョン

100年ビジョン策定の経緯

土木学会創立100周年を記念して次の100年を見通したビジョンを策定するという構想は、土木学会創立100周年記念事業の準備段階の当初からあった。すなわち、2007年度に設置された土木学会100周年記念事業準備タスクフォース(委員長:東京大学(当時)・藤野陽三氏)が提案した「土木学会創立百周年記念事業準備委員会」設置趣旨書の冒頭に「土木学会は2014年11月に創立百周年を迎える。これを機にこの百年を振返り記録にとどめるとともに、これからの百年における土木学会のヴィジョン、及び学会を構成する研究者・技術者等のあり方を、広く世に発表していきたい」と記されている。
その後、土木学会創立100周年記念事業準備委員会、100周年戦略会議を経て設置された土木学会創立100周年記念事業実行委員会の提案を受けて、2013年3月理事会において「土木学会将来ビジョン策定特別委員会」(以下、ビジョン委員会)の設置が承認された。
ビジョン委員会は、磯部雅彦次期会長(当時)を委員長とし27人の委員・幹事、8人のオブザーバー、7人の執筆協力者でスタートした。2013年4月15日に第1回委員会を開催して以降、2014年9月までに委員会6回、幹事会6回を開催し、「社会と土木の100年ビジョン─あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く─」(以下、100年ビジョン)を策定した。

100年ビジョン策定における若手、支部、学会外の意見の聴取

  • 100年ビジョンは図1に示すプロセスで策定された。100年ビジョン策定にあたっては、特に若手技術者の意見を多く聴取した。まず、2013年8月にはビジョン委員会メンバー等の協力を得て全国から人選した、学生を含む20代の若手20人による合宿ワークショップを開催した(写真1)。この合宿に参加した若手技術者の代表4人はオブザーバーとしてビジョン委員会に参加した。さらに、土木学会創立100周年記念事業として実施した「若手技術者交流サロン」は、2014年8月までに全国6支部で計10回開催され、約400名の若手が参加した。「若手技術者交流サロン」は2015年度以降も継続開催の予定である。
    また、2010年度から始まった全国大会での100周年記念討論会では、2012年度以降3か年にわたり、100年ビジョンに関したテーマを設定し学会外の有識者を交えて活発な討論会を開催した。

  • 図1 社会と土木の100年ビジョン策定フロー


    写真1 若手技術者合宿(ワークショップの様子)

100年ビジョンの概要

100年ビジョンでは、「未来に対する土木からの提案」としての「目標とする社会像─磯部会長の言葉では「北極星」─」を「持続可能な社会」とした。「持続可能な社会」とは、ある場所、ある水準にとどまるのではなく、社会のダイナミックな動きの中で終局的な破滅を回避し、持続性を実現するものでなければならないとしている。その実現に向けて、土木は、「安全」、「環境」、「活力」、「生活」の四つの視点と13分野の具体策により「あらゆる境界をひらき」取り組む。

100年ビジョンの関係機関への説明・講演会開催

  • 100年ビジョンの策定目的である、市民の土木への理解促進、社会と土木の発展、若手土木技術者のモチベーション向上等のためには、関係機関に積極的に働きかける必要がある。そこで、磯部会長は、2014年11月19日に国土交通大臣(写真2)、12月19日に(一社)日本建設業連合会、12月25日に(一社)建設コンサルタンツ協会に対して100年ビジョンの説明を行った。
    また、2015年2月10日には土木会館講堂にてビジョンの講演会を開催した(写真3)。講演会では、磯部会長によるビジョンの概要説明に加えて、ビジョン委員会副委員長の屋井鉄雄氏(東京工業大学)ほか委員会のコアメンバーによるビジョンを具体的に実行するための方策等について活発な討論があった。今後、各支部においてもビジョンの実現に向けた議論が展開されることを期待したい。

  • 写真2 太田昭宏国土交通大臣へのビジョン説明


    写真3 「社会と土木の100年ビジョン」講演会

創立100周年宣言に隠された六つの秘密

土木学会創立100周年記念式典において発出された磯部会長の土木学会創立100周年宣言は、100年ビジョンを基にビジョン委員会「土木学会創立100周年宣言」起草グループが中心となり策定されたものである。起草グループの中心となったビジョン委員会副委員長の屋井鉄雄氏(東京工業大学教授)によれば、宣言には下記に示す隠された秘密があるという。学会員の皆様、ぜひ確認してみてはいかがだろうか。

土木学会創立100周年宣言に隠された秘密

  1. 本文が11(十一)項目あります。これは土です。
  2. 一方、木は本文(本文冒頭の表題を除く)に18(十八)回登場する土木という単語です。この2つで土木を表しています。
  3. 前文は9行が4回繰り返され、九死を意味します。土木の置かれた厳しい過去や状況を表します。
  4. 後文は6行で世界の6大州、天と地を加えた6方位を意味すると考えます。すなわち、厳しい現状を土木の取組みで世界に展開させるということです。
  5. 全体は英文の翻訳タイトルを除けば、各表題を含めるとちょうど100行になります。100周年を意味しています。
  6. 本文の文章は46行です。これは、人のDNAの数と同じですから、本文全編に流れる人が大切ということを表しています。

なお、100行や9行×4などのかたちは重要であるが、それらはフォーマット次第(時代)で変わってしまう。それでも11×18の「土木」は無くなることはないという点が重要なメッセージである。

資料ダウンロード:

・100年ビジョンの概要

土木学会将来ビジョン策定特別委員会 構成

役  職氏  名勤務先名称
委員長 磯部 雅彦 高知工科大学 副学長
副委員長 屋井 鉄雄 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 教授
委員兼幹事長 木村 亮 京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 教授
委員兼副幹事長 髙野 昇 (株)日本能率協会総合研究所 顧問
委員兼副幹事長 日比野 直彦 政策研究大学院大学 大学院政策研究科 准教授
委員 島谷 幸宏 九州大学 大学院工学研究院 環境社会部門 教授
委員 田村 亨 北海道大学 大学院工学研究院 北方圏環境政策工学部門 教授
委員 福田 敦 日本大学 理工学部 交通システム工学科 教授
委員 藤井 聡 京都大学 大学院工学研究科 都市社会工学専攻 教授
委員 山﨑 隆司 ジェイアール東日本コンサルタンツ(株)  代表取締役社長
委員 依田 照彦 早稲田大学 理工学術院 社会環境工学科 教授
委員兼幹事 池田 豊人 国土交通省 道路局 環境安全課長
委員兼幹事 江守 昌弘 (株)建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 部長
委員兼幹事 大西 博文 公益社団法人 土木学会 専務理事
委員兼幹事 岡山 誠 鹿島建設(株) 土木管理本部 土木工務部 ダムグループ 課長
委員兼幹事 小澤 一雅 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 教授
委員兼幹事 柄澤 正芳 清水建設(株) 土木事業本部 土木横浜支店 工事長
委員兼幹事 清水 喜代志 国土交通省 都市局 街路交通施設課 課長
委員兼幹事 田頭 直人 一般財団法人 電力中央研究所 社会経済研究所 経済・社会システム領域リーダー・上席研究員
委員兼幹事 高津 徹 東日本旅客鉄道(株) 東京工事事務所 開発調査室 担当課長
幹事 飯田 善一郎 日本工営(株) 技術本部 技術企画部 PM技術室 課長
幹事 萱場 祐一 (独)土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター長 兼 河川生態 上席研究員
幹事 田中 伸治 横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授
幹事 寺部 慎太郎 東京理科大学 理工学部 土木工学科 准教授
幹事 長井 宣子 (株)大林組 土木本部 工務部工務第三課 副課長
幹事 中村 光 名古屋大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 教授
幹事 藤原 寅士良 東日本旅客鉄道(株) 構造技術センター 基礎・土構造グループ 副課長
オブザーバー 石田 哲也 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 教授
オブザーバー 石松 信哉 鹿島建設(株) 土木設計本部 地盤基礎設計部
オブザーバー 井上 篤史 清水建設(株) 土木事業本部 土木東京支店 外環大和田建設所
オブザーバー 小川 由布子 広島大学 大学院工学研究院 社会環境空間部門 助教
オブザーバー 白鳥 明 一般財団法人 首都高速道路技術センター 企画部 調査役
オブザーバー 橋本 鋼太郎 (株)NIPPO 顧問
オブザーバー 波津久 毅彦 首都高速道路(株) 神奈川建設局 建設管理課 課長
オブザーバー 丸山 史人 東日本旅客鉄道(株) 東北工事事務所 開発調査室
執筆協力者 石川 雄章 東京大学 大学院情報学環 特任教授
執筆協力者 上田 多門 北海道大学 大学院工学研究院 北方圏環境政策工学部門 教授
執筆協力者 岡村 未対 愛媛大学 大学院理工学研究科 生産環境工学専攻 教授
執筆協力者 神谷 泰範 中部電力(株) 経営戦略本部 電源グループ グループ長(部長)
執筆協力者 中井 祐 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 教授
執筆協力者 原 隆史 岐阜大学 工学部 社会基盤工学科 特任教授
執筆協力者 前田 健一 名古屋工業大学 工学部都市社会工学科・高度防災工学センター 教授

「土木学会創立100周年宣言」起草グループ 構成

役  職氏  名勤務先名称
委員長磯部 雅彦高知工科大学 副学長
副委員長屋井 鉄雄東京工業大学 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 教授
委員兼幹事長木村 亮京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 教授
委員兼副幹事長髙野 昇(株)日本能率協会総合研究所 顧問
委員兼副幹事長日比野 直彦政策研究大学院大学 大学院政策研究科 准教授
委員兼幹事池田 豊人国土交通省 道路局 環境安全課長
委員兼幹事大西 博文公益社団法人 土木学会 専務理事
幹事飯田 善一郎日本工営(株) 技術本部 技術企画部 PM技術室 課長

若手合宿WSメンバー

 氏  名勤務先名称
石松 信哉鹿島建設(株) 横浜支店 JR横環交差部工事事務所
松宮 央登電力中央研究所 地球工学研究所 流体科学領域
森瀬 真琴ジェイアール東海コンサルタンツ(株)土木事業部
三浦 泰人名古屋大学 工学研究科 社会基盤工学専攻
岩井 裕正京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻
小川 由布子広島大学大学院工学研究院 社会環境空間部門 助教
醍醐 宏治東日本旅客鉄道(株) 建設工事部 構造技術センター 耐震技術PT
佐藤 辰郎九州大学 大学院工学府都市環境システム工学専攻
佐々木 渉清水建設(株) 土木事業本部土木東京支店 土木第一部
JV東急渋谷基盤整備
小竹 輝幸政策研究大学院大学 開発政策プログラム
丸山 史人東日本旅客鉄道(株) 建設工事部 企画G
金光 嘉久鹿島建設(株) 東京土木支店 中央環状品川線統合事務所
五反田出入口工事事務所
安藤 達也(株)建設技術研究所 東京本社 河川部
大山 璃久九州大学 工学部地球環境工学科
島根 由佳東京理科大学 土木工学科
井上 篤史清水建設(株) 土木事業本部 土木東京支店 外環大和田建設所
澤村 康生京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻
山口 奈津美株式会社エコー 技術本部構造設計部
藤田 隼生(株)建設技術研究所 東京本社 構造部
海野 貴裕名古屋大学工学研究科社会基盤工学専攻