100周年記念事業 > 安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画(DCP)普及プロジェクト

社会安全

安全・安心・安定な社会づくりに向けた
地域継続計画(DCP)普及プロジェクト

  • プロジェクト背景

    人々が不安な気持ちに陥ることなく社会の安全が継続する、そういう社会作りこそが土木および土木学会が担う大きな役割のひとつである。
    東日本大震災以降、自治体や企業の間で注目されているBCP(事業継続計画)は、一組織の存続のためだけのものではなく、社会を構成するすべての組織、すなわち行政、地域コミュニティ、学校、病院、家庭等の各組織が継続し、最適な形で地域再生を果たす計画(「DCP(地域継続計画)」)でなければならない。
    最適なDCPの策定・実践を目指すためには、個々の組織のBCP策定に際して、目指すべき地域社会の安全・安心の姿が安定的にイメージされなければならない。そのための第一歩として、我が国の将来を担う子供たちを対象に、万一の災害に備えて「自分の安全は自分で守る」こと、加えて「社会の一因として何をなすべきか」を自覚してもらう教育・広報資料(ビジュアルパンフレット等)を作成すると同時に、地域継続計画を策定・実践するために必要な人材やノウハウの提供等の支援を行うものである。

    発行物


    ・PRリーフレット

  • プロジェクト略歴

    2012年度まで安全問題研究委員会 BCP小委員会において活動
    2013年度「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画(DCP)普及プロジェクト」が「土木学会創立100周年記念事業」に登録
    以後随時安全問題研究委員会 BCP小委員会を開催し100周年記念事業の進め方等を議論
    2014年後半100周年記念事業関連イベントを展開(キーワード:「住民目線での地域継続計画」)
    2014.7.10「安全工学シンポジウム」(建築会館ホール)/地域継続計画をPRするリーフレット作成の取組み等を報告)
    2014.9.12土木学会全国大会(大阪大学)研究討論会/「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画 〜万一の災害からの復旧復興 市民目線で捉えた地域社会の基盤整備〜」
    2014.9.13「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画に関する討論会in高槻市」
    2014.11.27土木学会安全問題討論会(土木学会講堂)/「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画」
    2015.5PRリーフレット「いざというときのお役立ちレシピ」完成(予定)

安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画に関する討論会

2014年9月13日(土) 10:30〜12:30
会場: 高槻市役所総合センター(14階大会議室C1401)
  • 2014年9月13日 大阪府高槻市において、「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画」に関する討論会を開催しました。当日は高槻市周辺の市民50名が参加し、BCP(事業継続計画)をDCP(地域継続計画)に関する活発な意見交換が交わされました。

    【プログラム】
    1)話題提供者による講演
    2)パネルディスカッション
【イベントレポート】

大阪府高槻市において、「安全・安心・安定な社会づくりに向けた地域継続計画」に関する討論会を開催しました。
当日は、香川大学白木教授の進行により、5名の方々から話題提供をいただくとともに、白木教授も含めた6名でパネルディスカッションが行われました。
会場には約50名の参加をいただき、BCP(事業継続計画)をDCP(地域継続計画)にどのように展開していくか、防災教育、福祉施設における継続計画など、多岐にわたる話題に関して、フロアからも含めて活発な意見交換がなされました。

1)話題提供者による講演

  • 白木 渡:安全問題研究会 BCP小委員会 リーダー、香川大学 教授
    我々にとって2011年の東日本大地震震は衝撃的なものでした。さらに大規模な災害をもたらす東南海地震や首都直下地震の発生が懸念されております。大地震が突然起こった時に、我々はどうしたらよいでしょうか?まずこのような大地震の中に身を置かれますと、頭の中が真っ白になり回りの状況を認められない、「不認の状態」と呼ばれる状態になります。その後に状況判断が出来るようになり、始めて避難という行動に移れます。従って、なるべく早くその状態を抜け出し思考・判断が出来るようになる事が鍵になります。従って行動に直ぐ移れる訳ではありません。日頃から意識して、「いつ」「どこ」で「何をしている」を考える事ですばやく対応出来るようにしておく必要があります。
    今日の研究討論会では、それぞれの家庭、職場や地域でどのように災害を最小限に抑え、生活の場を復旧・復興していけるのか考えていければと思います。
  • 須藤 英明:鹿島建設
    土木学会の安全問題研究委員会BCP小委員会の活動の一つとしてPRリーフレット(「いざというときにお役立ちレシピ」)の作成に取り組んでいます。防災関連の広報資料は多くの行政機関等から発行されていますが、当リーフレットは、1)なるべく多くの要点が簡潔に伝わること、2)一般の方々にできるだけ興味を持ってもらうこと、3)備忘録的用途にも役立つことを基本としました。人々が不安な気持ちに陥ることなく安全な暮らしが継続する社会づくりへの貢献が土木学会にも求められています。その一助として、そして、災害等に対峙した土木技術・構造物の素晴らしさを伝える資料のひとつとして活用されることを願っています。
  • 質問:
  • 国や自治体でも様々なリーフレットやパンフレットを作成しています。土木学会ならではの部分があれば良いと思いました。構造物関連の紹介に加えて、住宅の地震への備えや家具の転倒防止等も加えたらどうかと思うのですが?
  • 須藤氏:
  • 住宅の防災ですと建築学会の範疇になろうかと思います。当リーフレットはA3版の表裏1枚という構成なので、盛り込みたい内容は色々ありますが、土木学会が作る資料ということで土木構造物の話題を取り入れてみた次第です。その一方、市民の方々への身近な情報として、ダンボールで作る赤ちゃんベッドとか、インターネット等でも紹介されていますが、そうしたお役立ち素材・アイデアの糸口を、ご家庭のお母さん方や将来を担う子供たちに広く知ってもらいたいという願いを込めております。
  • 磯打 千雅子:香川大学危機管理研究センター
    巨大地震が発生した際は被害が広域となり、地域が機能不全に陥る恐れがあります。この事態に対応する地域継続計画(DCP)の策定・運用が必要です。香川県は東南海地震時において四国の防災拠点としての役割が期待されており、DCP策定に着手しました。国・県・市等の行政機関、ライフライン企業、商工会議所、経済同友会で構成する協議会を立ち上げました。各機関のBCPをDCPの視点から見直し・改善を図っております。香川DCPでは、地域インフラの復旧を戦略的に行うため、復旧優先順位の検討を香川地域が担う重要機能の観点で香川地域継続計画骨子を策定しました。
     また、最近では大規模な土砂災害や水害災害も懸念されております。香川県の土器川を対象に流域DCPの策定にも着手しました。対象範囲は土器川流域の3市3町範囲とし、流域内の上中下流域で地域特性・被害様相が異なるため、3市3町の連携、地域住民、組織との連携を地区防災計画等へ反映させて行きたいと考えております。
  • 白木教授:
  • 四国において安全問題研究会と共同で地域連携の問題を取り扱っています。国、県、市、民間の企業が連携して地域をどう守るか、地域をどう継続していくかという視点から検討してまいりました。市とか県とかで道路の復旧の優先順位が付いていますが、例えばある病院が道路ネットワークから切り離されて、その地域では重要だけども県と市の認識が異なりどちらかの優先順位から外れていれば拠点病院にはなれない。従って個々の組織がそれぞれの思惑で優先順位を考えてみても、地域全体で見ればおかしな事になる。そういう議論も重ねております。
  • 質問:
  • 下水・河川の事業を担当している者です。BCPの策定に取掛かかっていますが、進捗状況が芳しくない。洪水、土砂災害等の様々なハザードマップを作成しても、住民にどういう見せ方をすれば見易く判り易くなるのか、全てを重ねてしまうと判りにくくなってしまう。個別に作るとバラバラになり、いざという時に使い難くなる。避難場所が水害と土砂災害では異なりますので、見せ方としてどうして行けば良いのか苦慮しております。
  • 須藤氏:
  • 災害は多面性があり、一義的な対策ですべてが収まるということはありません。基本は、まず、住民さん自身が、自分自身の身を守るために何ができるか、何をなすべきかをまず考える。どこに避難するか、何を準備しておくかとか、どんな災害においても、まずは自分の身は自分で守るという主体性、必然性を一人一人に理解していただく意識(自助)が大切ではないかと思います。しかし同時に、住民の中には年配の方、体がご不自由な方々等もおられます。そういった方々に自助といっても難しい。この点、あらためるまでもなく、万一の災害時には、周りの方々が何をお手伝いできるかを日頃から考えてもらうということ(共助)が、併せて重要な姿勢ではないかと考えています。
  • 磯打氏:
  • 皆さん一番悩まれている問題だと思います。その問題に特効薬は無いと思います。こうゆう情報が欲しいな、困ったなという時、直ぐに情報にアクセス出来る事が重要です。常に情報を出し続けておく事が重要で、自分の身に降りかかってこなければ話を聞いてもスーと流れていってしまいます。マップを作ったので見て下さいとお渡ししても、相手が直ぐに見てくれるとは限りません。こういう情報が欲しいと気づかれた時に、ここに行けば、がありますよという情報を常時流し続け、それをあるタイミングでぱっとキャッチして頂けると、ものすごくその人にとっては、良い情報が得られたなという事になります。諦めずにあの手この手で、どんどん情報を流し続けていく事が大切だと思います。
    [白木教授]やはりマップなどは他人が作った物では身近に感じない。だけど、このマップを元に地域で防災街歩きをして頂いて、何か地域独自のものを展開してもらう。ちょっと面倒ですが、一連の作業を通して自分のマップにしてもらうのが一番重要だと思います。私の経験だと、そのような運動をして頂けると良い結果に繋がり地域の財産になります。
  • 質問(鍵屋氏):
  • 河川流域3市3町の連携の話題がありましたが、各自治体の主体性が乏しくなりませんか。自分の地域に責任をもって自分で考えるよりも、6つもあると控えめになってしまう。決められた事だけやる事になりがちです。主体性を引き出す努力の一つがワークショップだと思いますが、市町村が責任ある主体として連携する体制が築かれつつあるのでしょうか?
  • 磯打氏:
  • 協議会の中でも河川関係は検討会という形で行っております。住民のみなさんとはワークショップという形式でにぎやかに行っていますが、行政の方とは会議室の中で机を並べてという形になってしまう。そうすると、皆さんそのお立場での発言、相手の顔を見ての発言となってしまう。心の底からありがとうと思ってくれているのか、余分な仕事を増やしてと思われているのかは正直見えてこない。ありきたりですけど、協議会で大事にしている事は、月一回勉強会が終わった後に懇親会を必ず行い信頼感を高めていく。どう感じていて、何が問題なのかという事を、草の根でも詰めていく事が大事なのかなと思い、3年間ぐらい続けております。
  • 山下 祐一:一山コンサルタント代表
    最近、自然災害が多発し、生活者に大きな影響を及ぼしています。自然災害の地域住民への理解と減災を目指して防災教育を小中学生と高齢者を対象に継続実施しています。防災教育は平成17年から広島市を中心に行い、小中学生3010名、高齢者450名に実施しています。
    小学生の防災教育では、災害の概要の説明と防災クイズの実施、危険箇所の現地調査とその取りまとめと発表で行っています。
    高齢者の防災教育は、公民館等の要望による出前事業で活動しています。防災教育は「みんなで考えよう土砂災害」の題目で演習中心に行っています。高齢者はこれまでの経験から具体的な被害事例も多く聞く事ができレベルや関心も非常に高いです。
  • 白木教授:
  • 非常に地道な取り組みを10年に渡り続けられております。最近では弁護士や司法書士の方と一緒に被災後の対応まで考えられ、非常に素晴らしい取り組みだと思います。先ほどハザードマップの話もありましたが、こういう活動を通じてハザードマップの有効活用できる良い事例ではないかと思います。
  • 質問:
  • 地域防災に向けた取組みをしており、主に高齢者向けにハザードマップを作成しています。防災会議等でも、どこそこが危ないとか熱心にアドバイスを頂いております。話題提供で出ました小中学生向けの地域教育防災の取組みに興味があります。子供たちの意見に、電柱が危ないとか看板が危ないだとかありましたが、子供の目線ならではの意見がありましたか。
  • 山下氏:
  • 防災教育後のアンケートの結果によると、小学校3年生の例で災害時に自分で避難出来ますかの問に対して、半分が出来ると回答していました。防災の話を聞いて自分なりに行動出来るという事は本当に驚いております。もう一つは中学生になると地域に防災力になるのではないかと思います。昼間ですと父親や両親は働きに行っておらず、子供が家に居るという状態です。そうなると地域で力を発揮できるのは、中学生ぐらいの子供達になるのではと感じています。
  • 鍵屋 一:法政大学・板橋区役所
    福祉施設の消防計画は、災害時に特別に発生する事象への対応はありますが、災害時に継続すべき通常業務については検討されていません。そこで、福祉施設の事業継続計画(BCP)の策定を目指して、障害者福祉施設長などに災害対応現場の臨場感ある記録を読み込んでいただき、現行の防災計画における課題抽出、見直しの研修を実施しました。同時に人材育成手法として試みました。入所や通所などのサービス形態や利用者の障害の状況、昼夜の勤務形態や職員体制など、施設固有の状況を踏まえた実効性のある事業継続計画の策定が今後の課題で、引き続き協働と支援を進めていく予定です。
  • 質問:
  • 福祉施設の種別によって異なると思いますが福祉事業所の入居者の方々が、どれくらい災害について認識されているのか、またどれくらい災害の事を恐怖に感じているのか、認識レベルはどんな感じでしょうか?認知レベルが低い方々は避難させた場合、相当ストレスが掛かると考えた方が良いのでしょうか?どれぐらいストレスが掛かるものですか?
  • 鍵屋氏:
  • 目が見えない、耳が聞こえない、あるいは移動困難な身体障害の方は、災害に対するリスク認知は高いです。一方で乳幼児、知的障害あるいは高齢者の認知症の患者さんの認知レベルは当然低いという状況です。知的障害者が災害に見舞われた場合、普段取っていない行動や多動的な行動をする例があり、大きなストレスを受けていると思われます。認知症高齢者は、一旦避難しても徘徊したり元の場所に戻ろうとする行動が顕著に見られます。
  • 中澤 幸介:リスク対策.com編集長
    事業継続計画(BCP)の策定においては、優先業務の絞込みや、目標復旧時間・目標普及レベルの設定など、被災から極めて短期的な視点だけで考えられる場合が多数です。仮に短期的な事業継続に施工したとしても、特に中小企業など地域でビジネス展開している企業にとっては、地域全体が復興しなければ、企業の存続は極めて困難な状況になります。東北沿岸部では、東日本大震災から3年経った今も地元企業の経営状況は安定しているとは言えません。それまでの顧客であった町民が街を去り、取引先だった企業が倒産し、ビジネス環境が一変しました。こうした事態を防ぐには、日常的に地域活動に関わり地域と一体となって防災を促進するとともに災害時にも地域と連携するなど共助の視点を取り入れる必要があります。
  • 白木教授:
  • 個別組織の事業継続が地域全体の継続に繋がるのか。やり方や事前に合意をどのように得るのかが重要になると思います。実際に行われている事例がほとんど無いと思われますが、その点はいかがですか?
  • 中澤氏:
  • 企業のBCPを否定しているのではなく、それぞれの企業がBCPをやらないと日本経済が回らなくなり大変な事になってしまいます。BCPを行う必要があるけれど手順や方法に、まだ課題があると思います。行政は、同時に全ての企業や住民に対して支援を行う事は出来ません。例えば、給水車の台数も限りがありますから順番に地域を回ります。その回り方ですが、BCPで決められているからその順番で回りましたというだけで良いのか、地域において経済的に重要な所から先に回らなくてはならないか、そういう事を予め考えておかなければならないという動きが少しずつ出てきています。

2)パネルディスカッション

テーマ:「地域全体の継続に必要なものとは何か」

  • 座長:
    白木 渡
    安全問題研究会 BCP小委員会 リーダー、香川大学 教授
  • パネリスト:
    須藤 英明
    鹿島建設、土木学会安全問題研究委員会BCP研究小委員会委員長
  • パネリスト:
    磯打 千雅子
    香川大学,土木学会四国支部,香川地域継続計画検討協議会
  • パネリスト:
    山下 祐一
    一山コンサルタント代表
  • パネリスト:
    鍵屋 一
    法政大学、板橋区役所,NPO法人東京いのちのポータルサイト
  • パネリスト:
    中澤 幸介
    リスク対策.com編集長

白木教授:東日本大震災を受けて、あるいは今後起こる出あろう首都直下型地震や南海トラフ巨大地震等の大規模広域災害にどう対応するのかという問題があります。もちろん個人が自らの命を守る、それから家族、地域、職場等々の順番になるかと思いますが、個別の組織の継続から地域全体の継続を受けて、我々には何が必要で何を準備しおき、何が課題なのかという事を明確にして議論していく必要が有ります。 例えば、地域全体の継続に必要なものとは、地域にとって大切ものとは何か、自分達の身の回りあるいは街、住んでいる地域を考えてみてどういう仕組みで動いているのか考えておく必要があります。一つの組織あるいは個人では守れないので、個々の連携が必要となってきます。先ほどの地縁等の話しがありましたが地域の連携というのはどうあるべきか、また話し合う場が必要でその場でどう合意を生むのかという事があると思います。 これらの課題に各パネリストから御意見を伺いながら議論をしていきたいと思います。地域継続の課題ですが、異なる組織が連携する為にはその地域に何が必要かという考え方が一致してないと難しいのではないかと思われます。そうすると、その連携の形態やどの組織が中心になるのか、話し合いの場が作られ合意が得られるか。また、そのための流通的なものや、人材、予算等にまだまだ課題が多いと考えられます。各話題提供者の経験を踏まえてご意見を頂きたいと思います。 最初に地域全体の継続に必要なものとは何かから始めたいと思います。

須藤氏:東北の被災地に安全問題研究委員会の一員として出向き、教育関連の方々と話したときに教えられた話があります。学校では、普通の避難訓練に加えて、さらにもう一つ行っている訓練があるとのお話しでした。学校は地域の避難所に指定される場合が多く、災害が起こると講堂や体育館は地域の方々が、お年寄りや赤ちゃんも含めて避難してきます。そういった方々が避難されてきたときに、皆さん何ができますかと校長先生が生徒に向かって問いかけたそうです。「自分の身を守ることがまず大切だけれど、周りから避難してくる方々に何がお手伝いできるのかも考えてみましょう。」こういったことも含めて避難訓練をやっていますというお話を聞きました。とても素晴らしいことだと思いました。自分の身は自分で守る自助、その次にできる共助、そして何がお手伝いできるかを常日頃から子供達に教えていくということ、これは、地域の連携における、非常に重要な取組みの一端ではないかと感じた次第です。

磯打氏:私の主な研究テーマは、BCPとDCPで、ワークショップの開催など、企業や行政の方と一緒に勉強会を行っております。しかし、いつも困るのがBCPの作成に法的な強制力などが無く、結局やる気のある人が頑張っているのが現状であるという点です。役所や企業さんも頑張ってBCPを作りますが、落とし所がないので運用が継続しない。元気な人や声の大きい人が居なくなると、取り組みがそこで終わってしまう。それが課題だと思います。今回、中澤さんのお話にありましたが、法的な枠組みとして地区防災計画制度が始まり大きな期待を持っております。元気な人、頑張っている人が作ってきた大事な計画を、法律の枠組みで後押しが出来る.地域防災計画の市町村の防災担当者、住民,事業者と顔つなぎの役割が期待できます。法的な枠組みでバックアップされるので、頑張ってきた事が法律に基づいて公のものとして続いてくのではないかと大きな期待を持っています。ただここで懸念されるのが、法律で決めて良いものを作ったとしても、それを運用する人が趣旨をきちんと理解していないと間違った方向にいってしまう。地区防災計画制度も枠組みとして良い物が出来たので、運用する人材をきちんと育てて良い方向に使えると良いなと思っております。

山下氏:地域の防災教育の活動をしております。最近は、公民館などで防災教育を行うと、評判を聞いて様々な所からお誘いの話が来まして、施設の提供や講演会等の支援もしていただいております。さらに災害支援の活動も行っております。土木技術者だけではどうしても出来ない事もあり、他の分野のエキスパートと一緒に活動しております。今回の広島の土砂災害では、弁護士会、司法書士、社会福祉士、介護福祉士と一緒に防災ボランティアの支援をしました。避難者の相談にも、弁護士の方から技術的な支援のため一緒に同行して下さいとの話しがあり活動しました。自分達の技術を持ちより、さらに広げて大きな支援の輪を作る。この活動で良い成果が少しでも出せれば、自分達もレベルアップ出来るかなと考えている状況です。

鍵屋氏:地域全体の継続に必要なものは人命です。人命を失わなければ、復旧・復興あるいは生活の再建は比較的容易です。地震で人命が失わる理由は3つあり、住宅の倒壊、津波、延焼火災です。この3つをどう防ぐかが根本的に重要です。住宅が倒壊しなかったとして、次に1人では逃げられない人を、地域社会でどうやって守るのかを考える事が必要です。大槌町のある町内会の例を一つ御紹介したいと思います。そこでは車でしか避難出来ない人がいる。そこで全員で議論を重ねて、パブリックコメントを集めたり、専門家に相談したりして作った計画があります。地震直後の5分以内であれば車で逃げても良い。高齢者や障害者と同行避難するのであれば、5分後でも車で逃げてよい。それ以外の場合は車での避難はダメ。こういうルールを皆で決めました。地区防災計画の先取りです。5分の制限があるから、すぐ逃げる気になる。早めの避難は、周りの人にも避難する気を起こさせる。また災害時要援護者の同居者は、要援護者を家の前に出す。この要援護者を町内会の役員さんとかが拾い高合まで逃げる。みんなで何回も話し合ってルールを作って、次の地震の時には一人も死者を出さないようにしようと合意した。地区防災計画もこのような形で作られれば、最高に効果的な物になると思います。

中澤氏:僕も鍵屋さんと同じで人命を絶対守らなければならないと思います。そのためにはどうするか?人命を脅かす危険性を認知する事が第一歩と思います。個人個人は薄々気付いていると思うんですね。ただこれは点で、この点を線に結ぶという作業が必要と思います。行政や優秀な先生が呼びかけて防災教育を行えば良いのですが、そのリーダーが生まれないで困っている。一人ひとりが気付きを持っていているので、点を線から面にしていく取り組みが出来たら良いなと思っております。

白木教授:5人の方に色々お話を伺いました。やはり人命をいかに守るか重要です。しかし、守れない方を地域でどうケアしフォローするか課題となります。そのために地域のルールを作る というような話がありました。人命を守った後に来るのは、生活・地域の再建や職場への復帰などになるかと思います。それを地域全体でどう考えるかが次の課題だと思います。

質問:先ほどのお話でBCPや地域防災計画が抽象的で何にでも当てはまるような具体的でない計画の方が良いような話もあったかと思います。鍵屋先生のお話の中に、障害者に対して住民の方の理解が大切であるとありました。しかし、障害のレベルも様々ですし、家族の方には障害者をオープンにしたくないと思われる方もいらっしゃいます。計画の中にどうやって盛り込めば良いのか疑問に思いましたので教えて頂きたい。

鍵屋氏:障害者への日常的支援は大変充実してきました。しかし専門家が 支援という事でお手伝いに入ると、地域が引っ込む。専門家が来ているので我々は行き難いねとなると、何年か過ぎると地域との交流が無くなるパターンが多い。災害時の支援を考えると、時間的制約が強いので地域同士や距離が近い人が助けに行かないと間に合わない。例えば、障害者の中から手を上げ頂いて地域の中で訓練しその方も支援に回る。これからの防災訓練は、元気な人が集まって消防署の訓練を見学したり、パンを貰って帰るのではなく、障害者や高齢者の方をどうやって助ければよいかを地域の人と一緒に考える。先ほどの大槌町の例のように、他人事ではなく我が事として障害者の親御さんや関係者の方にねばり強く働きかけていく。あるいは障害関係団体と互いに話し合いをしながら、もっと外にオープンに出て行こうよと、こういう動きを強めることがノーマライゼイションの社会を作るのではないのかと思います。道は長いですけど、防災を切り口に障害者も含めて一緒に生活が出来る社会を目指すきっかけになればと思います。

山下氏:広島市内でも自主防災会を組織しまして災害時要援護者のマップを作っている例があります。誰がどこへ支援に行くかとい事を具体的な取り組みとして行っていると聞いております。

質問:下水道の計画や維持管理を行政で担当しております。今、下水道のBCP計画を考えていますが、災害が起こった時に想定される事象や復旧計画を考えると人員が足りない。職員自体も被災し半分程度しか集まれない可能性もあるし、本部のBCP計画を見るとそちらにも人員をとられてしまう。個別でBCPを作っても災害時の実状にそぐわないものになってしまうと悩んでいます。先ほどDCPの話があり、DCPの位置付けは各BCP計画が集まった全体計画になるのかどうか、また国の強靭化計画等を含めて全体として、どういう位置付けになれば良いのか判らない所がありまして教えていただきたい。

鍵屋氏:地域防災計画は、上下水道、警察署や自衛隊など役所の動きをホッチキスで止めたものです。それをある理念の元に統合し優先順位を定めている訳ではない。それらを統合するのは大変困難だと思いますが、DCPにより地域防災計画を変えていく事は可能で具体的な作業を一歩ずつ進めるしかない。
下水道のBCPについて考えると 2点あると思います。1点目は、下水道の復旧優先度はそれほど高くないと思います。たとえば仮設トイレ等の代替措置で時間が稼げます。2点目は、人員がすごく少ないという事ですが、来られる人を被災させてはいけない。企業のBCPは、社員は自分の身は自分で守りつつ家族の身も守り、安心した状態で出てこられる状況を前提でBCPを計画しています。社員がきちんと自助出来ているのか、隣近所で助け合える共助が出来ているのか、会社のほうから後押しをして社員の安全性を高めるというのがBCPの一番の基礎なはずです。その土台の上で始めて事業をどう継続するか考えられるという事です。下水道のBCPでは、時間的優位性と代替性があるという事を強調したらよいと思います。それから社員が無事であって、きちっと仕事が出来る体制になってから、手順を踏んで計画的に行えば良い。下水道は全国組織があるので、その仲間から得られる支援が強みでもあります。強みをたくさん考え、復旧の目安を、東日本大震災、阪神大震災を参考にして作れば良いと思います。

中澤氏:今の話が正に全体最適と個別最適の話で、水道だけのBCPを作る、水道局だけのBCPを作るでは、全体で調整をしないと資源の取り合いになってしまう。これは地域全体の防災計画にも繋がる話だと思います。地震に対する被災想定から日本のBCPを作成するため、実際に起こるかどうか判らない事象に対して何種類もシミュレーションを立ててなければならない。しかし、あんまり細かく作りすぎると、応用が非常に利きにくいという面を考えていくべきだと思います。担当者が替わった時に前任の計画を引継ぐのは大変な努力を強います。従って、計画自体はそんなに細かく作らなくても良いと思います。むしろ初動の部分で被災状況を確認する。あるいは自分達の稼動できる職員数等の持っている資源を把握し、それを報告する。初動の部分に力を入れて、誰が担当しても困らないようにマニュアル化しておく事の方が重要ではないかと思います。

白木教授:BCPにつきましては、色々議論がございます。一つは組織全体として考え方をきちっと共有しておく。始めに縦割りの組織や個別の組織からBCPを作っても、あとで統合していくのは難しいと思います。従って各部署から2,3名集まり全体の議論を最初にして意思と統一しておく作業が必要です。全体の関係性を考える場を作らないといけない。例えば、市役所であれば市長さんがきちっとDCPの意味を理解して全体を示してから、個々のBCPを作成する。各担当者が細かい作業して、ボトムアップで作るものでは決してない事を理解して頂きたい。
個別の組織のBCPは、家庭、会社、学校、地域、病院、福祉施設等々あるかと思います。色々と非常に良い考え方も出てきていますので、今日の議論を参考にして下さい。市町村レベルぐらいになりますとBCPや地域継続計画を作る事になるかと思います。しかし、まだまだ全国的には、地域計画の整備が進んでおりません。今回の議論を契機に、他の地域で普及促進に資する機会になればと思います。
本日はありがとうございました。

プロジェクトメンバー

役  職氏  名勤務先名称
リーダー白木 渡香川大学
メンバー土木学会安全問題研究委員会 BCP小委員会メンバー
須藤 英明鹿島建設(株)
大幢 勝利(独)労働安全衛生総合研究所
磯打千雅子香川大学
広兼 道幸関西大学
北條 哲男ものつくり大学
前川 行正ものつくり大学
木田 哲量日本大学
中村 一平広島工業大学
加藤 利弘国土交通省
越智 繁雄国土交通省
釜石 英雄厚生労働省
大西 博文土木学会
土井 博国土技術政策総合研究所
古木 守靖(独)国際協力機構
井上 晋一東日本旅客鉄道(株)
深尾 和代東日本旅客鉄道(株)
長谷川 潤(株)千代田コンサルタント
指田 朝久東京海上日動リスクコンサルティング(株)
石原 成昭清水建設(株)
佐藤 剛史(株)大林組
西川 誠一大成建設(株)
塩川 義之(株)長大
高野 忠邦高野労働安全コンサルタント事務所