100周年記念事業 > 西部支部 次の100年につながる継続性を期待して

西部支部

次の100年につながる継続性を期待して
─西部支部の土木学会創立100周年記念事業の取組み─

西部支部で実施した土木学会創立100周年記念事業に関して

  • 西部支部は土木学会創立100周年記念事業(以下、記念事業)として、主に(1)どぼくカフェ「コクドウを味わう」in 福岡(市民向けイベント)、(2)土木コレクション2014 in 福岡(市民向けイベント)、 (3)土木学会100周年記念シンポジウム「災害多発 地域・九州の災害を考える」(土木関係者および市民向けイベント)、(4)日韓台ジョイントセミナー(国際交流)の四つの事業に取り組んだ。その他にも、土木の日のイベント等はこれまでと同様に継続して取り組んでいる。(1)から(3)の事業に関しては、他支部で行われている記念事業と同様に土木の素晴らしさを市民に向けて発信していくという観点から進めてきた。この中で、(3)「災害多発地域・九州 の災害を考える」については、自然災害の多い九州地方における、水災害から火山噴火災害に関する今後の防災活動に、これまでの災害情報データ収集がいかに役立っているかについて、市民の方々を交えて活発な議論を実施し、今後の西部支部が行っていく安全・安心なまちづくりに関して広範囲に渡って意見交換がなされた。
    今回の記念事業の中で、西部支部の独自性を示しているのが(4)日韓台ジョイントセミナー(写真1~3)である。これまでも西部支部では日韓ジョイントセミナーを隔年で実施してきた。今回は記念事業として、新たに台湾を加えた3か国で日韓台ジョイントセミナーを2014年8月に韓国・釜山にて実施した。この事業は西部支部の地政上の特性を活かしてこれまでも関係性の高い東アジアの3か国でジョイントセミナーを行い、お互いの土木技術に関して理解を深めるというセミナーであった。今後、西部支部としても継続して次回は台湾で開催する方向で話が進んでいる。


  • 写真1 2014年8月に開催された土木学会創立100周年 記念事業日韓台ジョイントセミナー3か国集合写真


    写真2 日韓台ジョイントセミナー発表会の様子


    写真3 日韓台支部長集合写真

今後の西部支部活動の方向性および期待

土木学会西部支部では、今回の記念事業を契機に2014年度に実施した事業を土台としながら安全・安心なまちづくりに積極的に貢献していきたいと考えている。国際的な交流としては、すでに前述したように、九州という地政的な特徴、たとえば韓国・釜山とはジェットホイルで約2時間(博多⇔釜山)、飛行機で約40分(福岡⇔金梅)というきわめて近い距離にあり、かつその昔より大陸から伝わってくる土木技術の交流軸上に九州北部は位置していたこと(*)を意識しながらお互いの土木技術に関する理解を進めていくことを考えている。ただし、これまでも白村江の戦いや元寇、秀吉の朝鮮出兵などで争う期間もあったが、ほとんどの期間は市民交流を軸とした平和な文化的・技術的交流ではなかったかと思われる。西部支部としては、今後もこの地政的特性を最大限に活かしながら、韓国・台湾との土木技術を通しての独自の交流をますます深めていき、お互いに協力しあいな がら安全・安心な国づくりに土木技術で貢献できればと考えている。
最後に、今後も継続して安全・安心なまちづくりに貢献する土木技術を発展させていくためには、会員が土木学 会に所属することによって得られるメリットを高めていく必要があると考えている。現在は、大学などの教育機 関に所属している会員は、年次学術講演会や各種委員会主催の論文発表会での講演・論文発表などの機会がメリットとして存在しているために、フェロー会員・正会員・学生会員としてほとんどの方々が所属していると考えられる。ただし、学生会員の多くは、大学あるいは大学院卒業後に土木系の仕事に就職するが、その中で土木技術職公務員として就職した学生の多くは正会員になっていないと思われる。これは、技術職公務員として就職した彼らが、土木技術を必要とされる業務を実施していく上で、土木学会の正会員としての明確なメリットが存在していないことが一つの要因であると思われる。この問題を解決していくためには、明確なメリットをつくり出していく努力を地道に行っていく必要があると考えている。今後は、西部支部としても、学会員が土木学会に 所属することによって得られる明確なメリットをつくり出していくために、言い換えるならば、土木技術の価値を正当に評価して、それに対する対価あるいは評価を得られる仕組みを充実させていくために、この記念事業を始まりとしてますます励んでいきたいと考えている。

参考文献(*) 竹村公太郎:日本史の謎は「地形」で解ける、PHP文庫、337~356頁、2013年

(西部支部 支部長 山﨑惟義)